GEMFOREX(ゲムフォレックス)という海外FXブローカーはなぜ潰れたか?

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2023年5月31日、日本人トレーダー人気のあった海外FXブローカーがサービス停止しました。豪華なボーナスを展開し、アンバサダーに人気スポーツ選手を起用していたことでも知名度が高かったGEMFOREX(ゲムフォレックス)。彼らはもともとどんなブローカーで、なぜ倒産するに至ったのかについて見ていきたいと思います。

GEMFOREXがサービス停止に至った経緯

GEMFOREXは2022年までは大きなトラブルもなく運営を行っているように見えていました。それが2022年12月に入り、出金拒否の噂がSNS界隈で投稿されるようになってきました。FXにおいて出金拒否の話題が上がることはよくあることなので、それほど大きな問題にならないかと思いましたが、一部の関係筋では「年明けにGEMFOREXはヤバい」という声もあり、出金を急ぐトレーダーも出てきたようでした。実際に12月には出金遅延も出ていたようで、不安視するトレーダーもいたのですが、新規顧客獲得を行うべく、豪華なボーナスは健在。口座開設ボーナス入金ボーナスは当たり前のように行われていました。

年が明けて3月に入り出金遅延の解消が進んでいることが報告され、徐々に回復の兆しを見せていたGEMFOREXですが、3月後半には「eKYC導入」を発表、4月に入ってからは、出金遅延が続く可能性について新たに報告がなされました。このあたりからヤバい状態はさらに加速していきます。4月末には公式twitter(現X)が削除されます。そして5月に入り、立て替え出金の開始を発表、5月中旬には決済代行会社の持ち逃げ・未払いを公表、5月30日に銀行停止、5月31日にサービス停止に至りました。

GEMFOREXが発表したサービス停止に至る原因として

・集団による第三者への名義貸しおよび口座転売
・決済代行会社A社による35,879,651USD(約50億円)の持ち逃げが発生
・決済代行会社B社による1,098,709,370円(7,996,429.18 USD)の未払いが発生

があったことが大きな要因とされています。

その後、8月1日に新しい会社に事業継承がなされ、出金が再開となったことが確認されています。

GEMFOREXはどんな海外FXブローカーだったのか?

GEMFOREXは2010年に設立、Gemtrade LLCによって運営されていた海外FXブローカー。豪華なボーナスがトレードマークとなっており、海外FX初心者から中・上級者まで幅広い利用がなされていました。2022年後半では80万口座程度の口座開設実績があり、顧客増加数はかなり右肩上がりで展開されていました。

なお、GEMFOREXでは金融ライセンスを2つ所有し、セーシェル金融ライセンス(SD116)ならびにモーリシャス金融ライセンス(GB21026813)を取得していました。2019年ごろまでは金融ライセンスを保持していない海外FXブローカーだったため、ボーナスが豪華なのに信頼性が欠けると言われていましたが、2019年6月にやっとニュージーランドライセンスを取得しています。その後2021年にモーリシャスライセンス、2022年にはセーシェルライセンスを取得に至りました。

サービス停止前、GEMFOREXでは「オールインワン口座」「ガチゼロ口座」「ロースプレッド口座」「レバレッジ5,000倍口座」「ミラートレード専用口座」「お財布口座」「デモ口座」など多彩な口座が展開されていました。なかでもレバレッジ5,000倍口座は、当時では業界最大級の最大レバレッジを誇っていました。限定口座ではあったものの、募集があるとすぐに埋まってしまう人気ぶりが話題でした。

GEMFOREXの特徴

GEMFOREXが海外FXブローカーの中で人気を誇った理由には「海外FXの初心者でもやさしくわかりやすいサービス」を徹底していたことがあります。

そんなGEMFOREXの企業理念は「全ては最高の投資環境をお届けするために」。社名の由来であった「GEM」とはGlobel- Expansion- Methodの略で「世の中に広がるトレードの方式」を提供する会社を目指していたようですが、結果的には海の藻屑と消えてしまいました。

そんなGEMFOREXの経営ビジョンは

・世界一有名なFX会社を目指す
・世界最大級の投資ポータルを目指す
・1人1人のお客様を大切に末永くご利用頂ける環境作りを目指す
・世界一速いレスポンスを目指す
・銀行運営を行い、全金融サービスのオールインワン化を目指す

といったものが掲げられていました。

さらに、GEMFOREXはトレーダーとの間で16の約束を締結

GOOD

約束1:お客様の資金を保守
約束2:低スプレッド競争への不参加
約束3:隠れマークアップなし
約束4:リクオートと約定拒否追放
約束5:全取引の99.99%が0.78秒以内に執行される
約束6:口座開設は最短30秒で完了
約束7:取引開始までもスピーディ
約束8:必要書類は後日提出でOK!
約束9:口座開設に厳密な審査なし
約束10:入金反映は迅速
約束11:出金処理も迅速対応
約束12:最速サポート
約束13:FX自動売買ソフト(EA)を無料で提供
約束14:FXミラートレードも無料で提供!
約束15:成長と発展の継続
約束16:企業理念を貫くGEMFOREX

以上の約束を締結しながらサービスを行ってたようです。

GEMFOREXの豪華なボーナスとはどんなものだったのか?

GEMFOREXのボーナスキャンペーンには「口座開設ボーナス」「入金ボーナス」「その他ボーナス」の3つが主に行われていました。

口座開設ボーナスについては、入金を一切することなく、10,000~30,000円のボーナスを口座開設するだけでもらうことができたため、人気が殺到。ボーナスを利用してすぐにトレードが始められる点は魅力でした。しかし、この口座開設ボーナスが結局、ボーナス利用だけにとどまり、入金してトレードを行わないゾンビ会員を増やしてしまったことが結果的にサービス停止に至ったのではないかとも考えられています。
完全にノーリスクでハイリターンのボーナスのため、「自己資金をつぎ込みたくない」「なるべく少額トレードからスタートしたい」という海外FX初心者のトレーダーには高評価を得ていたことは間違いありません。

入金ボーナスとしては「1,000%入金ボーナスジャックポット」という入金ボーナスキャンペーンが毎日実施されていました。このボーナスキャンペーンの特徴は、

GOOD

・入金ボーナスキャンペーンの対象口座はオールインワン口座のみ
・365日年中無休で開催
・一切ハズレなし
・最大1,000%の入金ボーナスをGET
・2~1,000%の間での抽選実施
・抽選権利は、24時間に以内にMT4時間0時~23時59分59秒の間で、決済済み取引を5LOT以上行ったトレーダー」にのみ付与(権利獲得条件は余儀なく変更される場合あり)
・入金ボーナスは残高の金額分に対するLot数にて計算 (ボーナス額は含まず)
・権利取得日の初回入金分(10万円分まで)が対象
・ボーナスのみの出金不可

抽選方法については、トレーダー側で特に複雑な操作は必要なく、口座に入金額が反映されたらマイページに出現する「抽選ボタン」を押すだけ。しかし24時間を経過すると抽選ボタンは自動消滅してしまいました。

GEMFOREXではその他ボーナスとして「お友達紹介キャンペーン」も実施されていました。友人1人の紹介につき100%の入金ボーナスチケットがもらえるもので、友達を紹介するだけで、最大で入金額10万円分を証拠金としてもらえました。友人が5万円以上の入金をすることが条件となっていましたが、条件をクリアできれば3日以内にボーナスが付与されたこちらもメリットの高いボーナスとなっていたようです。

ほかにもGEMFOREXでは「他者から乗り換えボーナスキャンペーン」などがありました。他のFXブローカーを利用していたもののGEMFOREXへ乗り換えた際には、他のFXブローカーで出た損失分がボーナス補填されたようです。受け入れにあたって審査が必須でしたが、審査後に受け入れ承認されると借金が帳消しになるようなものでしたので、かなり派手なことをやっていたGEMFOREXの印象はぬぐえません。

第二のGEMFOREX に遭遇しないためには?

GEMFOREXのように人気の海外FXブローカーでもサービス停止に陥るのがFXの怖いところで、出金をしていなければ、場合によって口座に証拠金としてあるトレード資金が回収できなくなる危険性があります。

ここで資金の安全性について知っておくと便利なことをお伝えしておきましょう。海外FX取引をしていると「分別管理」はしているが「信託保全」はしていないといった話を耳にすることがあります。

分別管理および信託保全とは金融用語なのですが、利用するFXブローカーが分別管理を行っているのか信託保全を行っているのかは、このGEMFOREXのようにサービス停止になった際には非常に重要になります。

分別管理について

分別管理とは、トレーダーの資産をFXブローカーの運営資金と別口座で管理する方法をいいます。信託保全は信託銀行に信託して資産管理を行ってもらうのに対して、分別管理は信託銀行を利用せず、FXブローカー自身が銀行口座で管理します。分別管理の場合、倒産など万が一の際にはトレーダーの資金を持ち逃げする危険性をはらんでいるように見えます。とはいえ、実際には分別管理にはいくつかの種類があり、一概に不安とは言えません。

たとえば、分別管理を自社だけで行えば、無駄な管理コストが削減できるメリットがあります。しかし一方で、この方法ではFXブローカーが顧客資金を経営難の会社の運用資金に流用することもできなくはないのです。そのため、分別管理を複数の会社で行い共同口座を作って別会社が資金チェックすることができるような分別管理方法もあります。その場合は、いくつかの企業が間に入るため、FXブローカーがトレーダー資金を流用していないか第三者チェックを入れられ、安全性が高くなるメリットがあります(ただしコストがかかります)。

信託保全について

信託保全とは、トレーダーから預かった口座資金や取引損益、スワップ損益といった資産を会社資産と別に信託銀行に信託し管理することを言います。よってもしFXブローカーが倒産した場合でも、トレーダーが預けていた口座資金は全額返還されます。返還対象になるのは預け入れた証拠金やスワップ損益、評価損益、実現損益などのすべてです。国内FXブローカーの場合には、日本の金融庁の命令によって信託保全は義務付けられていますが、海外FXブローカーの場合、日本の金融庁登録をしていないところが多く、信託保全を行っていないことが多いです。

まとめ

GEMFOREXのサービス停止については、多くの業界関係者も驚きを隠せませんでした。これまでも日本から撤退したFXブローカーもたくさんありましたし、2023年9月にもexnessという海外FXブローカーは日本から撤退(日本居住者は口座開設ができなくなった)するなど、業界の目まぐるしい動きに翻弄されつつあるトレーダーもいることでしょう。

FXは投資なので、自分の資金を効率的に運用し増やせるブローカーを利用したいのは誰しもが思うことですが、裏側の内情についてわからないことも多く、ある時突然会社がなくなった、サイトが見れなくなったという事は起こりうることです。そうなった時に困らないためにも出金をこまめに行い、怪しいFXブローカーを利用しないことです。怪しいブローカーとは「出金拒否のうわさが絶えない」「やたらと顧客勧誘のためのボーナスを行っている」「日本語が怪しい公式サイトを持っている」「金融ライセンスを持っていない、または金融ライセンスが誰でもとれるレベルのもの」など、外から見てもわかるようなことで判断することもできます。

GEMFOREXのサービス停止を教訓として、健全なFXトレードができる環境を見つけましょう。